*** 初期のQSLカードとコールサインの変遷 (その1) ***
  
                             JA3AER 荒川泰蔵

  1. まえがき
   
    切手展の案内は、社友会のHPの「社友あれこれ」欄で案内させて頂いた事がありますが、
   去る2015年5月に、河内長野市にある大阪府立「花の文化園」で開かれた、公益財団法人
    日本郵趣協会(JPS) 河内長野支部主催の「花と趣味の切手展」に、2フレーム32リーフの
   「アマチュア無線初期のQSLカード」と題した作品を展示したところ、一部の参観者に関心
   を持って頂きましたので、郵趣とは少し観点を変えて紹介したいと思います。

  
 文中Qの付く3桁の記号が多く出てきますが、これらは「Q符号」と言い、電信で通信する
   場合、少ない文字数で内容を伝えるために決められた世界共通の符号です。
   アマチュア無線家は電信だけではなく電話でも、また日常会話やメールなどでも良く使って
   います。英語やその国の言語を知らなくても通じる便利さがあります。電波法に関連する
   無線局運用規則に決められた「Q符号の意義」とは必ずしも一致しない使い方もありますの
   が、文中では括弧内に簡単な説明を書いておきます。

  2.  骨董的なQSLカードの入手の経緯
   
    米国のSECに出向時の1980年代に、ニューヨークで開かれる切手展にしばしば足を運ん
   でいました。そこでは日本のそれと同じように、切手商もブースを並べて郵趣品の販売をし
   ていました。

   切手やFDC(初日カバー)などの他、古い絵葉書なども売られていました。それらを物色して
   いる内に古いQSLカード(交信証明書)の束を見つけ、30数枚をセットで買い求めました。
   値段は覚えていませんが、米国以外の切手は剥がされていて、郵趣的にはあまり価値のない
   ものでした。

  3.  入手した一連のQSLカードの概要
    
    これらを調べてみるとW2BJT, Mr. Thomas Galbraith宛のQSLカードで、本人の未使用
   のQSLカードも2枚混じっていました(写真1の左)

    QSO(交信)は我々が生まれる以前の1927年から1929年にかけての2年足らずの期間の
   ものですが、日本で初めて草間勘吉さんにJXAXというコールサイン(写真1の右)で免許が
   与えられたのが1927年9月ですから、日本のアマチュア無線の黎明期のものです。

    約半分が米国内のQSLカードで、残りがカナダ、メキシコ、キューバ、ジャマイカ、
   エクアドル、アルゼンチンと、ほとんどが北米と南米のものですが、それに英国のQSL
   カードとドイツのSWLカード(受信報告書)が含まれています。この時代にこれらの国々
   にアマチュア無線家が活動していたことは珍しいことではないのですが、この約2年間の
   僅か30枚ほどのQSLカードに、コールサインの変遷が見られることに興味を持ちました。

   これは偶然なのか、Mr. Thomas Galbraith が意図的にこれらのQSLカードを選んでロット
   として切手商/郵趣家に託したものなのか分かりませんが、これらを遺品として遺族に残した
   としても、いずれ捨てられる運命だったでしょうから、郵趣品として保存/継承され歴史的
   な研究の資料にと、郵趣家に託したと考えても不自然ではありません。
   そうだとすると90年近く生き延びたこれらのQSLカードを手にした私に、これを整理して
   公開する義務があるのではと考え、郵趣作品の形で公開させて頂いたものです。

 
 写 真 1

  4.  QSLカードにあるコールサインの分類
    
    これら一連のQSLカードのコールサインは次の3種類に大別できます。

   1. 「数字 + 2または3文字」の形式で国籍表示がないもの(写真2)

 
写 真 2

   2. コールサインの前に国が識別できる2文字を付けたもの(写真3)

 
写 真 3


   3. コールサインの前に国際符字列による国籍表示を付けたもの(写真4)

 
写 真 4

    先ず1番の「数字 + 2または3文字」のコールサインは米国商務省がアマチュア無線局に
   与えたもので、これが標準になって世界に広がっていきました。

    これには国籍表示がなく世界的には重複することも考えられたのか、アマチュア無線家が
   2番のように国が識別できる2文字の符号をコールサインの前に付けだしました。

    JJ1WTL本林さんの情報によりますと、これは第2世代目で1927年2月1日以降から実施
   されたようです。

    では第1世代はと言うと、1923年(大正12年)から1926年(大正15年)にかけてARRL
   (米国のアマチュア無線連盟)がQST誌(ARRLの機関誌)に英文字1桁の国籍符号をつけること
   を推奨していたのですが、そのようなカードは今回のロットの中には見つかりませんでした。

    しかし、それらは国際的な合意を得たものではなく、将来的な秩序が保たれない懸念から、
   3番のように、国際無線電信会議で決められた国際符字列による国籍表示を付けることに
   なって今に続いています。

    これもJJ1WTL本林さんの情報によりますと、1927年の国際無線電信会議(ワシントン
   会議)で規則が改正され、アマチュア局・実験局にも公式な国際識別符号が付くことになり、
   その発効は1929年の元旦とされました。
   しかし、国によってはそれを待たずに1928年(昭和3年)の内からコールサインの切り替え
   に着手したそうです。
                 
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