平成29年12月度句会入選句鑑賞     喜田征治



  宇宙からリストラされた流れ星   升成 好  
  
  普通、流れ星と言うと、願い事を叶えるとか、美しく・はかないとか、
 流星群に至っては宇宙の神秘すら感じるほど良い意味に使われます。
 ところがこの句は、そういう一般の常識を覆し、リストラの対象に仕立て
 てしまいました。これが川柳と唯々感心するばかりのユニークな一句です。

 
  勝つまでは止めると言わぬずるい人  和住明次

  
  四人揃わないと出来ないのが麻雀。一人足りないと我儘な上司でも誘う
 より他有りません。10時迄と決めて於いても案の定負けが込んでこの上司
 終わる気配がありません。手加減をして一寸勝たせて終わる事になります。
 昔はこんな光景が当たり前で、これで結構部門の成績も良かったようです。
 
  兄ちゃんが後出ししたと悔し泣き  木津和敏彦
 
  兄妹家に居る時は何時も一緒の中の良さ。お母さんが出してくれたオヤツ
 片方が大きめです。どちらを取るかじゃんけんで決める事としましたが、
 さすが兄ちゃんフェイントをかけ後出しで当然勝ちます。悔し泣きする妹の
 頭をなでなでして一件落着、そんな長閑な光景を可愛い一句に仕上げました。
 
 
  部下の手柄いいとこ取りをする上司  寺川はじむ
 
  一見物分かりのいい上司と言うのがくせものです。部下の大きな手柄を
 誉めるのは当然ですが上への報告は可成りニュアンスが変ります。
 成果の内容はそのままですが主役が部下から自分に置き換わります。
 それもさりげなくやる巧妙さ、上司運の悪い子の部下に同情申し上げます。
 

  負けてんか限り限りだっせ小商い   谷川 憲

  
  「商いは損と元値で蔵が建ち」お客さんこれ以上負けたら大損・元値切
 るがな、と客には泣きついておいてちゃんと儲けて蔵まで建ててしまいます。
 こんなしたたかな大阪商人と、遠慮なしの大阪のおばちゃんのやりとりを
 見事にとらえました。

  
これ以上負けたら一家心中や    太田としお

  本当のギャンブラーはこんなセリフは言いません。善良な市民がたまたま
 ギャンブルにのめり込みますが、家計を破綻させる程大きく賭ける度胸は
 ありません。少し負けが込んで気弱になってるようですが心配無用、少し
 勝つと今度は家族にささやかなプレゼントなど、お返しをしてこの一家す
 こぶる安泰です。