平成30年2月度句会入選句鑑賞     井上輝好



  不祥事へ雁首揃え詫びポーズ    島田誠一  
  
  当該社は勿論の事、日本製品の信用を失墜しかねない大企業の度重なる
 不祥事。首をそろえたトップは本当に心から反省して詫びているのだろうか
 本当にガバナンスが機能しているのでしょうか。「ポーズ」と言う語に作者
 が持つ企業トップらに対する不安や疑念が表れていると思います。

 
  ほほづえをついた君見る授業中    木津和敏彦
  
  直接相手に告げる勇気がなく、ほほづえをついている姿を見惚れて授業に
 身が入らない、誰にでも経験がある青春の淡い恋心と感情を思い出させる良
 い句だと思います。


 古希過ぎて達者な妻に惚れ直す     和住明次
 
  若い頃も奥様の甲斐甲斐しさにぞっこんだったと思われますが、歳を重ね
 るにしたがって最も頼れるお元気な奥様にこれまでにも増して惚れこむ心境
 は高齢者には実感するところです。
 素直に表現しているところが良いと思います。
 
 
  惚れてたの今さら言うなクラス会   萩原大朔
 
  今となれば時効と思って若い頃の本音が出たのでしょうか。実は私も思っ
 ていたが勇気がなかった。もしもその時代に戻れたら、もし一緒になってい
 たら、私の人生は今どうなっていただろう等々、様々な想いが頭をめぐらす
 懐かしいようで、寂しくもあり、楽しさもある良い句だと思います。
 

 足りを知る庭でゆったり古都の旅   今田和宏

  
  心身ともに健康でなお且つ物質面でも何の心配もなく、まさに物心共に
 ゆったりと余裕があり、静かな古都の庭の歴史と自分を相照らし、時間の
 ゆっくりとした流れを感じておられるのではないかと拝察しました。


 教育のゆとり我儘育て上げ      喜田征治


  ゆとり教育とは響は良いが、現実には将来我が国を支える人材作りに
 どれだけ役立つのか。ゆとりの部分を家庭で補えるのか、作者の心配される
 こともうなずけます。