令和2年8月度句会入選句鑑賞     和住明次



  頑張らず目くじら立てず逆らわず    米井とみこ  
  
  植木等さんの「ニッポン無責任時代」を思い起こしました。3つの「ず」の
 発想と、それをテンポよく表した見事な句です。我が余生も、この(3ず)で
 過ごしたいものですね。
 
 鈍行で行こう読みたい本がある     今田和宏
     

  世はスピード時代・・・(新幹線時代からリニア新幹線時代へ)時代と共に
 鈍行の良さが失われつつあります。又、本も新聞と共にスマホ時代へ・・・。
 この句で、作者の「あわてず、ゆっくり」の心情が良く伝わってきます。


 化粧せずいつもマスクとサングラス   木津和敏彦
 
  新コロナ禍での社会現象を上手く表現しています。特に、マスクは、異業種
 の参入、「アベノマスク」等の話題がありましたが、一方、この句に有ります
 「化粧せず」で化粧品の売り上げが急減しているそうです。
 

 普段着でどうぞ真に受け赤っ恥     喜田征治
 
  忠臣蔵・・浅野と吉良の話ではないですが・・・現在でも多々ある話で、この
 句は作者の実体験を強く感じます。特に、下5の「赤っ恥」がこの句を引き立て
 ています。

 身長が止まるどころか減って行く    前川 淳

  
  歳を取るにつれて、日々強く感じる現実の悲哀を見事に表現された句です。私
 も孫の身長に抜かれてからは、出会う度に差が大きくなっている自分自身の老い
 (減っている)を実感しています。


 正倉院うっとりさせる至宝満ち     谷川 憲


  長い歴史を経た宝物を対象とした目付けに感心しました。 歴史好きな人には
 「うっとり」させるたまらない一句ですね。