令和3年1月度句会入選句鑑賞     田部 和幸選



  誇るほどでもないが僕には過ぎた妻    寺川 はじむ
  
  これだけ嫌みなく堂々と妻を誇れる作者のやさしさが溢れた素晴らしい句。

 好きな児にわざと見つかるかくれんぼ   喜田 征治
 かくれんぼ好きなあの子は見えぬふり   米井とみこ


  幼い頃のかくれんぼ、男の子は好きな児に早く見つけてもらってはしゃぎたい
 と思い、女の子は少しはにかみも有って好きな児を最後まで残しておく…こんな
 純な頃も有ったんだと思わすほのぼのとした句。


 諦めて買うと出てくる探し物       木津和敏彦
 探し物見付かる頃はもう要らぬ        村上 玄也
 
  ひとりは諦めて買いに走り、ひとりは途中で探すことを諦めたわけです。
 どちらも大した探し物でなかったことがうかがえるひねりの利いた面白い句。

 風邪ひきで寝ているはずが内野席      伏見 雅明
 
  テレビ中継でサボりが見つかってしまった。誰もが近い経験をしていそうな
 納得の句。

 本物に憧れている紙コップ         今田 和宏

  
  ビールは冷えて水滴の付いたグラスで飲んでこそ美味い、それを知っている
 紙コップの心情、見事な擬人化の秀句。


 松の内過ぎて牛歩の初詣          河邉 滋郎

  
  コロナで三か日は自宅にこもった反動で遅まきながらの初詣、誰しも考えは
 同じと見えて参道は押すな押すなの大混雑と言う所でしょうか。牛歩が利いて
 いますね。