令和6年9月度句会入選句鑑賞     木津和 敏彦選

 

 

  停戦がかなわぬままでパリ五輪         谷川 憲

 オリンピックは平和の象徴。ウクライナ、イスラエル等の戦争の終わりが見えない中
 期間中の停戦もなく戦争はいつまで続くのでしょうか?

 

 夕立で濡れて飛び込む縄のれん         和住 明次

 帰宅時の突然の夕立。ちょっと一杯にはちょうど都合の良い言い訳ができた。サラリーマン
 のあるあるをユーモラスに詠んだ秀句です。

 

 株波乱濡れ手で粟の荒稼ぎ           喜田 征治

 8月上旬の突然の株の乱高下、株相場の流れをうまくつかんだ作者は大儲けをされたの
 でしょうか?

 

  接戦に負けて濡れてる球児の目         中野 勲

 白熱した夏の高校野球。甲子園でも接戦の名勝負が多数あった中、甲子園出場を目指す地方
 予選では最後の夏をかけた球児の戦いもあった。もう一歩足らずの口惜しさを上手く表現さ
 れた句です。

 

 エアコンの音も悲鳴の燃える夏         寺川 はじむ

 今夏の酷暑は異常です。エアコンも一日中フル稼働させないと室内でも熱中症で倒れる始末。
 人間だけでなくフル稼働のエアコンも壊れそう。エアコンを擬人化して酷暑を上手く表現さ
 れた句です。

 

 電気代けちり医者代払う夏           田部 和幸

 酷暑の中、電気代等の公共料金はうなぎ上り、年金生活者には厳しい季節です。室内でも熱中
 症になる
危険性を電気代がもったいないと我慢した挙句倒れて病院通い。
 何とも本末転倒なあるあるを上手く表現された句です。

 

 浄瑠璃は芝居の役者より泣かせ          奥 時雄

 日本古典芸能の一つ人形浄瑠璃。人形の動きと義太夫の語り、雅楽等の融合の芸術がこの先長く
 伝承される日本であってほしいものです。浄瑠璃を選ばれた作者の見識の深さに感服です。