令和7年 3月度句会入選句鑑賞     小林 旅人選

 
   

早まった免許返納バスは来ず       園山 高遠

 免許返納については、色々な考えがあると思う。都会で、交通の便がいい所では返納もいいでしょうが、

 私の様に田舎暮らしでは、車が無ければ生活ができないのでまず無理です。だから、免許返納に関しては早まった

 事をすべきでは無いと思っています。

悔いのない人生なんて味気ない     寺川 はじむ

 サラっと言っているようで、奥深い句です。これぞ川柳と言うべき作品です。自分を見つめてみれば、

 人は悔いだらけで生きているように思います。逆に、悔いが有るから立っていられるのではないでしょうか。

 本当に悔いのない人生は味気ないかもしれないです。

断捨離をし過ぎた部屋に悔い残す    寺川 はじむ

 引っ越しをする時、思い切って色んなものを捨てました。今となっては惜しい事をしたと言う思いが多々あるけど、

 どうしようもありません。

二月堂籠たいまつが春を呼ぶ       谷川 憲

 二月堂のお水取りは、いつも待ち遠しいものでした。本当に、お水取りが終わったら春がそこにいる様でした。

 ただ、奈良に30余年住んでいたのに一度も行った事はありません。

三才児言葉も悪さめきめきと        井上 輝好

 三才児を見ていると、人間の頭脳はすごいと思う。難しい言葉は知らないけど、普通に意思疎通ができる。

 又、かわいい悪さやいたずらもできる様になりそれも嬉しい。

ゼロからのスタートだった上野駅      成田 せいじ

 私が新入社員の頃は、上野駅は東北地方や北関東への玄関口で、関西育ちの私は異国に行く様な思いで、

 栃木に赴任しました。上野駅はスタート地点でした。当時が蘇ります。

嫁ぐ朝無口の父が頷いた          谷川 憲

 「頷いた」と言う言葉の重さを感じる一句です。結婚する安堵感や、行ってしまうと言う寂しさとかが

 入り混じって「頷く」に至ったのでしょう。

            

                         作者重複の鑑賞ですが選者の意向でありそのまま掲載します