令和7年 4月度句会入選句鑑賞     田部 和幸選

 

 善悪は問わず強者が勝つ戦         奥  時雄

 大は侵略戦争、小は子供のいじめまで悪がのさぼるのが悲しい現実。これをズバッと言い切っ

 てこれで良いのかと問う、作者の魂が垣間見られる句です。

 極楽行きの切符欲しさに功徳積む      岩西 信雄

 歳を取るにしたがって信心深くなっていくのは地獄へ落ちるのが怖いから。日々功徳を積んで

 どうせなら極楽へ行きたいものです。老境の偽らざる心境に納得の句です。

 笑い皺重ねた善に人集う          田所 英雄

 笑い皺…よい言葉ですね、いつもにこにこしている人に悪人はいません。

 老いて笑い皺いっぱいの善人の周りにはまた似通った善人が集まるという作者、かくありたい

 と思わす素敵な句です。

 殻破り夜明けを待ってセミになる      河邉 滋郎

 五年間ほどを幼虫で過ごし、地上に出て二週間ほどで生を終えるセミ、それでもその間懸命に

 鳴き生を全うしていくセミ。セミの二週間に負けないように我々は長い老後を実有るように生

 きていきましょう。いろいろと深読みの出来る句です。

 見えすぎる眼鏡にストレスが絡む               今田 和宏 

 老眼鏡の度数が上がってレンズが牛乳瓶の底みたいに分厚くなって来ました。

 兎に角、ぼんやり霞んだ文字がハッキリと見えて欲しい。しかし作者は物事の裏が見えすぎ

 るとストレスが
溜まりますよとお題の眼鏡を使って表現。まさに秀逸の句です。  

 屋根の上家族になったノラ二匹       米井とみこ

 恋が実って夫婦になったノラ二匹がぽかぽか陽気の屋根の上でニャ~ンと戯れている。

 すぐに子供が出来て大家族になっていくのでしょう。家族というお題にノラを持ってきた

 目付の素晴らしい
句です。

 親子でもけじめと書かす借用書       喜田 征治

 少子化で親は子供を甘やかしすぎです。作者は子供に対し毅然と接しているようです。

 うん?子供が親に借用書を書かせているのかな…と考えると更に面白みが増す句です。