令和7年 11月度句会入選句鑑賞     喜田 征治選

   

             

 

 表向き健やかそうで薬漬け        谷川 憲

 人からは、いつもお元気そうでと羨ましがられますが内心余り良い気持ちでは有りません。
 家で は、百均で買った仕切り付きの箱に朝・昼・夕の薬を仕分けその種類は6種に及びます。
 今後も増える事は有っても減る様な事は無さそうです。

  

 健康も金暇やる気三つ揃え        奥 時雄

 何が困ると言って健康でやる気も有り結構暇、の状況で金が無いのが最悪で一番
 辛い状態です。結局家で
ゴロゴロするしか手が有りません。
 更に怖い怖いお人が露骨に愚痴ります。嗚呼不健康でも金が欲しい。

 

 あらあらと笑顔で叱る内は良い      結川 一男

 母親にとって我が子の成長は一番の楽しみであり生きがいです。小学校くらい迄は
 何をやっても あらあら
と見逃してくれましたが 成長するに従い優しい笑顔は消え
 カタキに出会った様に厳しくなります。

 

 お帰りですかあらあらまあと嬉しそう   田所 英雄

 桂米朝さんの得意ネタ 京の茶漬け 京都ではブブ漬けでもは、早く帰れのシグナル。
 ある男そのブブ漬けを
食ってやろうと馴染の家へ ブブ漬けを誘われご馳走に成りますと
 待ちます。その後のやりとりは名人芸で

 

 風雅とは縁ない暮らし秋刀魚焼く     今田 和宏

 相当な歳に成り奥方には先立たれ、独り身の生活には優雅などほど遠い。それでも好物の
 秋刀魚が豊漁で安くて美味いとなると自分で調理するより有りません。
 さんま苦いかしょっぱいか の独り言。

 

 ポケットに使える金が十五万       岩崎 公誠

 この句15万が実に上手い 年金老人にとって 一寸嬉しくリッチに思える金額。
 何に使おうかあれこれ思案しているのが至福の時です。 
 奥様へのプレゼント? さて何が欲しいのやら・・・

 

 逃げ隠れ出来ぬところで鉢合わせ     寺川 はじむ

 私20代の頃秋葉原電気街のセールスとして勤めました。狭い範囲4社程の担当で時間が
 余って、よくサウナなどに行きました。ある時そこで上司と鉢合わせ、お互い罰が悪かっ
 たが以後裸の良き付き合いが続きました。

 

 レッスンを受けて素質の無さを知る    河邉 滋郎

 教える側から見ると、自己流で固まってしまった一寸上手が一番嫌。次が何を教えても
 一向に上達しない人だそうです。その自覚ができたらせめて先生には腰を低くして友好
 関係は崩さぬ努力も必要です。

 

 昭和の子塾はソロバンだけで済み     田部 和幸

 我々昭和人は子供の頃、とにかく算盤3級を取れないと就職出来ないと言われ 
塾へ通いました。結局
4級止まりでしたが、 就職した会社が電卓を発明し、算盤不
必要で無事勤め上げる事が出来ました。