令和7年 12月度句会入選句鑑賞     谷川 憲 選

             

好き嫌い云えず忖度宮仕え     河邉 滋郎

  合わせようと忖度しても波長の合わぬ上司に仕え、つまらぬ苦労をしょい込んだ悲哀が身にしみます。

 

好きな字を書けと言うなら夢だろう 今田 和宏

  幼少の頃に夢見たこと、学生時代の夢、世に出て様々な苦労の中でも夢見たこと、職を辞し趣味に

 明け暮れ追っかける夢、晩年に至ってもなお追いかける夢、人生の秀句です。

 

歳月は好一対の夫婦生み      奥 時雄

  縁に結ばれ、楽しみ、苦労を共に味わい「好一対」となった夫婦、時には愛情からの諍いもあった

 でしょう。時雄さんのこの十七音、読むほどに味わい深く涙が出ます。

 

喋りこみ行き着く先は縄のれん   田所 英雄

  友人、仕事仲間ついつい話が尽きず、夢中になり縄のれんで一杯酌み交わしながらの情景が目に浮か

  びます。

 

誰だって自分弁護の嘘はつく    喜田 征治

  世に言うどんな優れた人であっても、随筆や自叙伝の中にご本人は意図していないでしょうが自分の

  ことを「盛っている」ということはよく耳にしますね。

 

地震より嫁の沈黙なお怖い     岩西 信雄

  このところ地震活性期に入ったようで沈黙していた列島が揺れだし怖いですね。

  それより普段優しいと思っていた奥様の突然の沈黙、突然鳴動しだしたら「ああ怖い」

 

天災は人ごとのまま逝きたいな   田部 和幸

  「天災は忘れたころにやって来る」寺田寅彦の格言があった時代から今は多災の時期のようです。

  本当に和幸さんの願いに同感です。

 

嫁姑俺はいつでもやじろべえ    米井とみこ

  嫁姑の絶妙なバランスをとる日々のご苦労が目に浮かびます。

  「やじろべえ」の比喩がほっとさせる秀句と思います。