7月は明石のブランドマダコ、8月は南紀の真夏の夜の風物詩アカイカ、標準和名はケンサキイカで2カ月連続≪軟体動物≫釣りである。この軟体動物食って実に味わいがあり、釣っても魚を釣るのと大違い、釣るというのか掛けるというのか非常に趣があり嵌まる釣りだ。
アカイカ釣りは、6月の声を聞くと南紀・串本、周参見方面で一斉に口火が切られ、今年は型、数ともにいい情報が入ってきており期待がもてそうだ。
7月21日に発生した迷走台風5号が2週間も太平洋上を彷徨い、ようやく本土から去った8月9日午後5時、南部堺の築山丸に到着。台風5号の影響で5日から船はでていないが船長との挨拶も還る言葉も明るかった。
午後5時45分、日没を待つのかスローで港をでると、やはり陸地から見るのと違い波もあり、また感じるのは真夏の潮色ではなく、どうも水潮ぽく薄く感じた。南下45分で水深72m地点でパラシュートアンカーが投入され釣り開始だ。≪底から探ってぇ〜10mまで。乗らなんだら、それ繰り返してよぉ〜≫。
釣り座が左舷の艫で、釣友の釣況はよく分かるが結果は直ぐにはでない。船中第1号は釣り始めて20分も経っていたろうか、≪何mよぉ〜≫、≪20m≫。≪もう30mから上探ってよぉ〜≫と。
マダコ釣りはタコテンヤを海底に這わしておければいいのだが、アカイカ釣りは水深70mも80mもある深場を流すので、どの棚を探ればいいのか棚取りが難しく、どうも乗りが悪い。
釣り始めて2時間も経った頃、船長マイクが急に≪竿上げてぇ〜場所変わるよぉ〜≫と全速で走る。15分も走ったろうか、漆黒に浮かぶ僚船の漁火夜景も近く、何故か哀愁が漂う。
第2ラウンド第1投、80号錘が降りてくれない。あれぇ〜リールトラブル?。そうでなかった浅場で乗っていた。こんなこともあるのだ。船長マイクも≪浅いよぉ〜。浅いよぉ〜≫のハッパが響く。7本浮きスッテにデュエット、トリオの乱舞。生簀が真っ黒で排水が追っ付かない。圧巻はクインテットの演奏でうれしい墨の洗礼も顔面に。
船長は伸びの悪い釣友の仕掛け交換に忙しく≪シンプルな仕掛けがいいのよぉ〜≫とアドバイスに走り廻っている。
釣れる時はいとも簡単に釣れ、何の悩みもないうきうき気分が続き、少し落ち着いた頃、船長が釣れたアカイカを持参したプラケースに並べてくれ≪15杯が4つと、この4杯よ≫とクーラーin。時に午後10時45分。≪11時半迄まで頑張ろかぁ〜≫。
釣れだすと型も大きく胴長25cmの幅広もまじり、よく釣れる時は棚も浅いと言われるが、しかし浅棚をただスローで巻いていても釣れず、電動をマックスにアクションをかけたり、スローで誘ったり、知り得る釣法をおり混ぜ30mから誘って必死に釣りまくった。
第1ポイントで9時までに10杯が、第2ポイントでは11時半までに64杯。実に終り良ければ全てよしだ。
帰港の船風は実に爽快で、心地よい疲れが五体に沁みわたる。その時ふと、何故、もう少し早く場所変わりしてくれなかったのか、100杯は?。実に強欲な釣り人の性が脳裏をかすめ打ち消しに必至だ。まあ、何処まで行っても≪満足≫という言葉を知らないのは我のみか。
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